線状アンテナ(ダイポール・実効長・短縮率)
電流分布と実効長
素子の直径と短縮率(いまの周波数)
横軸は素子の直径(対数)、縦軸は短縮率δ[%]。いまの周波数での曲線で、琥珀色の縦線が選んだ直径。
この図の読み方
- 上の図は素子に乗る電流の分布。点線の長方形は、同じ面積を持つ一様な電流に置き換えたときの長さ(実効長)を表す。
- 折返しでは同じ向きの電流が素子数ぶん並ぶので、長方形の高さが素子数倍になり、実効長も同じ倍率で伸びる。
- 下のグラフは、いまの周波数で素子を太くしたときの短縮率。右へ行くほど(太いほど)短縮率が大きい。
- 波長に対して細い素子では短縮率は数%にとどまる。周波数を上げると同じ直径でも相対的に太くなり、曲線が持ち上がる。
この計算が問われる場面
対象: 一陸技 / 無線工学B
出題頻度: A問題の3〜5問目あたりにほぼ毎回。微小と半波長の電界比、短い素子の放射抵抗、折返しダイポールの実効長と受信電圧、素子の太さと短縮率が交代で出る
線状アンテナの計算は「実効長」と「利得」の2つでほとんど説明がつく。実効長は、素子に乗った電流の分布を、同じ面積の一様な電流に置き換えたときの長さである。半波長ダイポールでは λ/π になり、n 本を束ねた折返しなら電流が n 倍乗るので実効長も n 倍になる。電波を受けると実効長に比例した電圧が素子に生じ、整合した受信機にはその半分が現れる。送信側では、利得の平方根が電界に効くので、微小ダイポール(1.5)と半波長ダイポール(1.64)の電界の差はわずか数%にとどまる。
公式の読み方
- G絶対利得(真数)。微小ダイポール1.5、半波長ダイポール1.64
- P放射電力[W]
- dアンテナからの距離[m]
- le実効長[m]。半波長はλ/π、n本の折返しはnλ/π
- Rr放射抵抗[Ω]。短い素子ほど (le/λ)² で急に小さくなる
- V₀受信したときに素子に生じる誘起電圧[V]。整合した受信機の端子にはV₀/2
試験の頻出ポイント
- 電界は利得の平方根に比例する。微小と半波長の電界比は √(1.5/1.64)、係数では √45 と 7 の比
- 短い素子の放射抵抗は 80π²(le/λ)²。与式の P を I² で割れば出る形で、波長は300/f で出す
- 折返し半波長ダイポールは素子数 n で実効長 n 倍、入力インピーダンス n² 倍(2本で約292Ω)
- 整合した受信機の端子電圧は誘起電圧の半分。端子電圧から電界へ戻るときは2倍してから実効長で割る
- 太い素子ほど短縮率が大きい。Z₀=138log₁₀(2le/d)、δ=42.55/(πZ₀) で、片側長は(λ/4)(1−δ)
シミュレータで確認する
- 種類を「微小ダイポール」と「半波長ダイポール」で切り替える観察: 同じ電力・距離での電界の比が約0.96のまま変わらない→ 電界の比は利得の平方根の比だけで決まり、電力と距離に依らない
- 「折返し半波長」で素子数を2→3→4と増やす観察: 実効長が素子数に比例して伸び、入力抵抗は2乗で増える→ 電流が素子数ぶん乗るので実効長はn倍、同じ電力を受け取る抵抗はn²倍
- 素子の直径を太くしていく観察: 短縮率が増え、共振する片側の長さがλ/4より短くなる→ 太い素子は端の容量が大きく、短い長さで共振する
例題
二線式折返し半波長ダイポールで100MHzの電波を受信した。整合のとれた受信機の入力端子の電圧が2mVのとき、受信点の電界強度を求めよ。
- 波長: λ=300/100=3m
- 実効長: 二線式なので le=2λ/π=2×3/π≒1.91m
- 誘起電圧: 整合時の端子電圧は半分なので V₀=2×2=4mV
- 電界強度: E=V₀/le=4/1.91≒2.09mV/m
答え: 約2.1mV/m
放射の原理や電流分布の考え方を文章で確かめたいときは、教科書「アンテナの基礎」を、折返しダイポールの構造は「アンテナ方式図鑑」を読むのがおすすめです。