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電離層伝搬(MUF・跳躍距離)

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1ホップ伝搬の断面図(h = 300 km、θ = 60°、fc = 5 MHz、f = 9 MHz)

0100200300400高さ[km]仮想反射層 h = 300 km距離[km] →地表鉛直線反射(f ≦ MUF)送信点θ = 60° (鉛直線から)受信点 1039 km不感地帯 898 km まで

地表と仮想反射層の断面図。太い実線が1ホップ経路で、送信点から不感距離までのハッチ帯が不感地帯。選んだ波の着地点は帯の外側に来ることがある。

この図の読み方

  1. 横軸は距離[km]、縦軸は高さ[km]の断面図。縦横で縮尺が違うため、図の見かけの傾きは入射角θそのものではない。
  2. 上の破線が見かけの高さhに置いた仮想反射層。入射角θは鉛直線(層の法線)から測り、地表からの仰角ではない。
  3. f<=MUFのときは太い実線が層で折り返して受信点へ戻り、f>MUFのときは折り返さず層を突き抜けて上へ抜ける。
  4. ハッチの帯が不感地帯で、終端は不感距離2h√((f/fc)²−1)。反射波はこれより近くへは戻らない。選んだθが最小反射角より浅いと、着地点は帯の外側になる(地表波の到達範囲はこのモデルでは扱わない)。
  5. 地球の丸みを無視した平面幾何のため、実際の1ホップ上限(およそ4000km)を超える距離も式どおりに表示する。

この計算が問われる場面

対象: 一陸技・二陸技 / 無線工学B(一陸技)/無線工学(二陸技)

出題頻度: 電離層の構造と電子密度、臨界周波数と正割法則によるMUF、跳躍距離と不感地帯、デリンジャー現象や磁気嵐によるMUF・LUFの変動は、電波伝搬分野の定番。短波回線の周波数選択の根拠として毎期のように問われる

短波が地球の裏側まで届くのは、上空の電離層が鏡のように電波を戻すからである。電子密度が高いほど、また電波を浅い角度で打ち上げるほど、高い周波数まで反射できる。真上へ打ち上げて戻ってくる上限が臨界周波数fcで、鉛直線からθだけ傾けるとその上限はfc/cosθまで伸びる。これが正割法則であり、この上限がMUFである。MUFを超えた電波は反射せず電離層を突き抜けて宇宙へ出てしまい、送信点のまわりには電波が戻らない不感地帯ができる。実運用ではMUFぎりぎりを避け、0.85倍のFOTを常用周波数に選ぶ。

公式の読み方

  • N_max電離層の最大電子密度[electrons/m³]。10¹²で fc=9MHz になる。10¹¹単位で与えられたら指数を戻してから代入する
  • f_c臨界周波数[MHz]。垂直入射(θ=0°)で反射して戻る上限の周波数
  • θ鉛直線(電離層面の法線)から測った入射角[度]。0°が真上、90°に近いほど浅い打上げ。地表からの仰角ではない
  • h見かけの高さ(仮想反射層の高さ)[km]。E層は約100km、F2層は約300kmが目安
  • D選んだ入射角θの波が1ホップで戻る距離[km]。θを変えれば変わる
  • D_skip不感距離(跳躍距離)[km]。その周波数の反射波が戻る最短距離で、この内側が不感地帯。反射できる最小の入射角θmin(cosθmin=fc/f)の波が着地する距離にあたる。θ=θminのときだけ D と一致する

試験の頻出ポイント

  • 臨界周波数は fc=9√(Nmax/10¹²)。Nmaxはelectrons/m³、fcはMHzで扱う
  • 正割法則 MUF=fc/cosθ のθは鉛直線からの入射角。仰角を代入すると答えが変わる
  • FOT=0.85×MUF。MUFは日変化・季節変化・磁気嵐で動くので余裕を見込む
  • 入射角θの波が1ホップで戻る距離は D=2h tanθ。θを変えれば着地点も変わる
  • 跳躍距離(不感距離)は最小反射角θmin(cosθmin=fc/f)での 2h√((f/fc)²−1)。不感地帯の終端はここ
  • デリンジャー現象ではD層の吸収が急増してLUFが上がり、短波回線が使えなくなる

シミュレータで確認する

  1. 初期条件(h=300km・θ=60°・fc=5MHz・f=9MHz)のまま図を見る観察: 経路が電離層で折り返し、約1039km先の受信点へ戻るMUF=5/cos60°=10MHzなので、9MHzは反射側に入っている
  2. 使用周波数fを12MHzまで上げる観察: 経路が折り返さず、電離層を突き抜けて画面の上へ抜けるf>MUFになると反射せず、その回線は成立しない
  3. 使用周波数fを4MHzへ下げてから、入射角θを60°から30°へ変える観察: MUFが10MHzから約5.8MHzへ下がるが、4MHzはまだ反射側に残る。1ホップで戻る距離は約346kmへ縮む浅く打ち上げるほど高い周波数まで使えるが、近距離は届かなくなる。角度を立てる前に周波数を下げないと、f>MUFのまま回線が成立しない
  4. そのまま見かけの高さhを300kmから100km(E層相当)へ下げる観察: MUFは約5.8MHzのまま変わらず、1ホップで戻る距離だけが約115kmへ1/3に縮む反射できる上限周波数は角度と電子密度で決まり、高さは距離だけを決める

例題

臨界周波数 fc=5 MHz の電離層へ、鉛直線から60°の入射角で電波を打ち上げる。MUFとFOTを求めよ。また、見かけの高さを300 kmとして、この波が1ホップで戻る距離を求めよ。

  1. 正割法則 MUF=fc/cosθ のθは鉛直線からの入射角。cos60°=0.5 をそのまま使う
  2. MUF=5/0.5=10 MHz。これがこの角度で反射できる上限の周波数
  3. FOT=0.85×MUF=0.85×10=8.5 MHz。MUFの変動を見込んだ常用周波数になる
  4. 戻る距離は D=2h tanθ=2×300×tan60°=600×1.732=1039 km(θ=60°の波の着地点)

答え: MUF=10MHz、FOT=8.5MHz、1ホップで戻る距離 約1039km

類題をランダム演習するには計算練習モードへ

なぜHF帯だけが電離層で戻ってくるのかを言葉から確かめたいときは、無料の基礎講座「電波の基礎」の周波数帯の章を先に読むのがおすすめです。地表付近だけを見る見通し距離と読み比べると、遠距離通信の手段が周波数で切り替わることが分かります。層構造やデリンジャー現象・磁気嵐といった計算に載らない範囲は「伝搬の特論」が扱います。