伝送線路(特性インピーダンスと入力インピーダンス)
入力インピーダンスと線路長(Z₀ で規格化)
横軸は線路長の波長比 l/λ、縦軸は入力インピーダンスを Z₀ で割った値。実線が抵抗分、破線がリアクタンス分。
この図の読み方
- 横軸は線路の長さを波長で割った値。0.25がλ/4、0.5がλ/2で、0.5ごとに同じ形がくり返す。
- 破線はリアクタンス分。正の側ならコイル、負の側ならコンデンサとして働く。
- 短絡・開放ではリアクタンスが発散する点がある。図は±5Z₀で切っているので、線が途切れたところが共振点。
- 抵抗負荷では実線(抵抗分)が R と Z₀²/R の間を往復する。λ/4 の点の高さが1/4波長整合の値。
- 琥珀色の縦線が、いま選んでいる線路長の位置。
この計算が問われる場面
対象: 一陸技 / 無線工学B
出題頻度: 給電線の計算はほぼ毎回A問題に1〜2問。平行二線・同軸の特性インピーダンス、短絡・開放線路の等価素子、1/4波長整合、開放・短絡測定が繰り返し出る
給電線はただの電線ではなく、長さそのものが回路素子になる。先端を短絡した線路は、短いうちはコイルとして働き、1/4波長で無限大のインピーダンスになり、それを過ぎるとコンデンサに変わる。開放した線路はその逆である。抵抗をつないだ線路では、1/4波長ごとに見えるインピーダンスが Z₀²/R と R を行き来する。この性質を使えば、値の違う抵抗どうしを1/4波長の線路1本で整合できる。どの計算も、線路の寸法から Z₀ を出し、長さを電気角 βl へ直すところから始まる。
公式の読み方
- Z₀線路の特性インピーダンス[Ω]。平行二線は 276log₁₀(2D/d)、同軸は (138/√εr)log₁₀(b/a)
- Z_L終端の負荷[Ω]。短絡は0、開放は∞として式を極限で読む
- βl電気長[rad]。線路の長さを波長で割って2πを掛けた角度
- Zin線路の入力端から負荷側を見たインピーダンス[Ω]
- λ波長[m]。λ=300/f[MHz]。誘電体を詰めた線路では1/√εr 倍に縮む
試験の頻出ポイント
- 短絡線路は jZ₀tanβl、開放線路は −jZ₀cotβl。λ/8 ならちょうど ±jZ₀ になる
- リアクタンスを等価素子へ直すときは L=X/ω、C=1/(ω|X|)。ωは2πf で、MHzを Hz へ直す
- 1/4波長整合の Z₀ は両端の値の相乗平均 √(Z₁R)。寸法から主線路の値を先に出す問題が多い
- 開放・短絡で測った2つの値の積の平方根が Z₀。虚数単位は積で消える
- 同軸の Z₀ は比 b/a の対数に比例する。誘電体が同じなら係数を消して比で解ける
- 無損失線路では L=Z₀/v、C=1/(Z₀v)。速度が光速の何倍かから L・C を逆算できる
シミュレータで確認する
- 終端を「短絡」にして、線路長を0から少しずつ伸ばす観察: リアクタンス(破線)が正の側へ伸び、等価素子がコイルと表示される→ 短い短絡線路はコイル。λ/4 に近づくほどインダクタンスが大きくなる
- そのまま λ/4 を越えるまで伸ばす観察: リアクタンスが発散したあと負の側から戻り、等価素子がコンデンサに変わる→ λ/4 の短絡線路は開放と同じに見える。この反転がスタブ整合の原理
- 終端を「抵抗負荷」、長さを λ/4 にして、Z₀を動かす観察: 入力端の抵抗が Z₀²/R で動き、相手のインピーダンスと一致したところで整合表示が出る→ 1/4波長整合の条件 Z₀=√(Z₁R) を、値を動かして確かめられる
例題
導線の直径2mm・線間隔100mmの空気の平行二線の終端を短絡した。周波数60MHzで、終端から0.625mの点から見たインピーダンスと等価なコイルのインダクタンスを求めよ。
- 特性インピーダンス: Z₀=276log₁₀(2×100/2)=276×2=552Ω
- 波長と電気角: λ=300/60=5m、βl=2π×0.625/5=π/4
- 入力インピーダンス: Zin=jZ₀tan(π/4)=+j552Ω(誘導性)
- 等価インダクタンス: L=552/(2π×60×10⁶)≒1.46µH
答え: 約1.46µH
線路の構造や平衡・不平衡、スタブ整合の考え方を文章で確かめたいときは、教科書「給電線と整合回路」を読むのがおすすめです。複素数の負荷はスミスチャートで扱えます。