一陸技・二陸技|無線工学B
無線工学B 用語集 — 電波伝搬・アンテナ・給電線・雑音の言葉を1ページで
無線工学Bの教材と教科書に出てくる言葉を、このアプリで使っている定義のまま引けるようにまとめた。式や係数は各教材と同じ規約(λ=300/f[MHz]、回折損失は正値、遮断周波数以下は非伝搬など)で書いてあるので、演習の途中で意味を確認したいときの辞書として使ってほしい。用語から対応する教材へそのまま移動できる。
収録77語/5分類。各分類の中は読みの五十音順に並べています。
基礎
電波そのものの成り立ちに関わる言葉。電界・磁界からマクスウェルの方程式まで。
- 磁界じかい
電流や磁石がまわりの空間につくる状態で、強さHの単位はA/m。直線電流のまわりでは右ねじの法則に従う同心円の磁力線になる。磁力線には始点も終点もなく必ず閉じたループになり、単独のN極・S極は存在しない。一定の直流がつくる磁界からは電波は生じない。
関連電波の基礎
- 自由空間の波動インピーダンスじゆうくうかんのはどういんぴーだんす
平面波の電界Eと磁界Hの比で、真空中では√(μ₀/ε₀)=120π≈377Ωという定数になる。比が一定なので、電界だけ測れば磁界も電力束密度も決まる。電界強度の式に現れる係数30も、120π÷4πという比から出てくる値である。
- 周波数しゅうはすう
波が1秒間に繰り返す回数で、単位はHz。無線工学Bの計算式はMHzを既定の単位として書かれており、λ=300/f[MHz]も自由空間伝搬損失の定数32.45もMHz前提である。GHz表記で与えられた問題は、式へ入れる前にMHzへ直すと単位の取り違えを防げる。
関連自由空間伝搬損失
- 周波数帯しゅうはすうたい
周波数を10倍ごとに区切った呼び名で、MF、HF、VHF、UHF、SHFなどがある。波長が変わると伝わり方も使い道も変わり、VHF以上では見通し内の伝搬が主役になる。一陸技の計算問題はSHF帯(3〜30GHz)の固定マイクロ波回線を題材にすることが多い。
関連電波の基礎
- 電界でんかい
電荷がまわりの空間につくる状態で、その点に+1Cの電荷を置いたときに受ける力として定義される。単位はV/m。静止した電荷がつくる電界(静電界)は時間的に一定で、そこからは何も伝わっていかない。電波になるのは電界が時間とともに変化するときである。
関連電波の基礎
- 電気力線でんきりきせん
電界のようすを描くための仮想的な線で、正電荷から出て負電荷へ入る。線が密な場所ほど電界が強い。閉じた面を貫いて出ていく総量が、面の中の電荷Qだけで決まるというのがガウスの法則である。
- 電磁波でんじは
変化する電界が磁界を生み、変化する磁界が電界を生む連鎖が、発生源を離れて空間を進む波。電界Eと磁界Hは互いに直角で、どちらも進行方向に直角な横波である。静止した電荷や一定の直流からは生じない——「変化」が電磁波の材料である。
関連電波の基礎
- 電磁誘導でんじゆうどう
ループを貫く磁束が変化すると、そのループに沿って電界の渦が生まれる現象。ファラデーが1831年に発見し、発電機の原理になっている。「磁界の変化が電界をつくる」という向きの矢印であり、変位電流と対になって電磁波の連鎖を成立させる。
- 電波でんぱ
電界と磁界が互いを生み合いながら空間を進む電磁波のうち、電波法で「三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波」と定義されたもの。媒質を必要とせず真空中も伝わり、速さは約3×10⁸ m/sである。物理としては赤外線や可視光と同じ電磁波であり、違いは周波数だけである。
関連電波の基礎
- 電力束密度でんりょくそくみつど
単位面積を1秒間に通過する電力で、単位はW/m²。自由空間ではEとHの比が一定なので、電界だけを使ってS=E²/120πと書ける。この形で平均電力密度になるのはEが実効値(rms)のときで、振幅(最大値)Emを使うならS=Em²/(2×120π)である。受信アンテナが取り出す電力は、この電力束密度に実効面積Aeを掛けた値になる。
関連電界強度
- 波長はちょう
波1回ぶんが空間に占める長さで、単位はm。c=fλからλ=c/fだが、本アプリでは試験用の近似としてλ[m]=300/f[MHz]を使う。100MHzなら3m、3GHzなら10cmとなる。アンテナの寸法も導波管の遮断も、絶対的な長さではなくこの波長との比で決まる。
- 変位電流へんいでんりゅう
コンデンサの極板間のように導体電流が流れない場所でも、変化する電界が電流と同じ資格で磁界をつくる、という考え方。マクスウェルがアンペールの法則へ付け加えた項である。これがあって初めて電界と磁界が互いを生み合う連鎖が閉じ、電波が存在できるようになる。
- 偏波へんぱ
電波の電界Eが振動する向きのこと。大地に対して垂直なら垂直偏波、水平なら水平偏波と呼ぶ。ダイポールアンテナはエレメントと同じ向きの偏波を送受信するため、送受で偏波が直交すると受信レベルは数十dB下がる。衛星通信では偏波を使い分けて同じ周波数で2回線を確保する。
関連電波の基礎
- マクスウェルの方程式まくすうぇるのほうていしき
電磁気学を4本にまとめた式で、ガウスの法則、磁気に関するガウスの法則、ファラデーの電磁誘導の法則、アンペール・マクスウェルの法則からなる。後ろの2本が互いを生み合うループをつくり、そこから波動方程式とc=1/√(ε₀μ₀)が導かれる。一陸技・二陸技で導出は問われないが、λ=300/fも120πもこの4本の帰結である。
伝搬
電波が空間を進むあいだに何が起きるか。損失・回折・反射・見通し距離の言葉。
- EIRP(等価等方輻射電力)いーあいあーるぴー
送信電力と送信アンテナの絶対利得の積で、等方性アンテナに置き換えたときの等価な放射電力。dB計算ではP[dBW]+G[dBi]の加算で求まる。電界強度や受信電力の式に入るのは送信電力そのものではなくEIRPである。
- 回折かいせつ
障害物の縁で波が回り込み、幾何学的な影の内側にも到達する現象。このため見通しが切れても受信点は完全な圏外にはならない。回り込みの程度は波長に対する障害物の大きさで決まり、周波数が高いほど回折しにくくなる。
- 回折損失かいせつそんしつ
回折によって生じる損失Ldで、本アプリでは正値のdBとして表し、合成時に自由空間伝搬損失へ加算する。v=0で約6.02dB、v>2.4ではおよそ13+20log₁₀vになる。用いているLee近似はv=2.4の境界に約0.8dBの不連続を持つが、これは近似式の性質であって物理現象ではない。
- 幾何学的見通し距離きかがくてきみとおしきょり
大気の屈折を考えず、電波が完全に直進するとしたときの水平線までの距離で、d=3.57(√h₁+√h₂)[km]となる。電波の見通し距離より短く、両者の比は√(4/3)≈1.155である。問題文がどちらを問うているかを必ず確認する。
関連電波の見通し距離
- 距離の4乗則きょりのよんじょうそく
大地反射を含む2波モデルで、ブレークポイントより遠方の受信電力が距離の4乗に反比例する性質。dBでは40dB/decadeの下り坂になり、自由空間の20dB/decadeより急である。移動体通信の経路損失モデルの出発点にもなっている。
- 自由空間伝搬損失じゆうくうかんでんぱんそんしつ
反射も回折も吸収もない空間で、電波が球面状に広がって薄まることによる伝送損失。Lfs=32.45+20log₁₀f[MHz]+20log₁₀d[km]で計算し、fもdも2倍で+6dB、10倍で+20dB増える。定数32.45はf:MHz・d:km専用で、f:GHzなら92.45になる。
- 電界強度でんかいきょうど
受信点における電界Eの大きさで、単位はV/mまたはdBµV/m。自由空間ではE=√(30·EIRP)/dとなり、距離の1乗に反比例して−20dB/decadeで下がる。送信電力には平方根で効くため、EIRPが10倍でも+10dBにしかならない。式のdはm単位で代入する。
- 電波の見通し距離でんぱのみとおしきょり
丸い地球の上で、電波が届く水平線までの距離。標準大気の屈折を含めてd=4.12(√h₁+√h₂)[km、h:m]で求める。高さは平方根でしか効かず、アンテナを4倍高くしても距離は2倍にしかならない。h₁=100m・h₂=25mなら4.12×(10+5)=61.8kmとなる。
- 等価地球半径とうかちきゅうはんけい
大気の屈折で電波がわずかに下へ曲がる効果を、「電波は直進するが地球の半径がK倍に膨らんだ」と読み替えたときの半径。標準大気では実半径の4/3倍として扱う。地表のカーブが緩くなるぶん、幾何学的な水平線より遠くまで届くことになる。
関連電波の見通し距離
- 等価地球半径係数(K=4/3)とうかちきゅうはんけいけいすう
等価地球半径を実半径の何倍とみなすかを表す係数で、標準大気ではK=4/3。見通し距離の係数が幾何学的な3.57から電波用の4.12へ変わる理由がこれである。4.12=3.57×√(4/3)という関係で結ばれており、2つの係数は独立ではない。
関連電波の見通し距離
- ナイフエッジ回折ないふえっじかいせつ
山の稜線のような薄い刃状の障害物を仮定した回折のモデル。見通し線からの突出量hをフレネルゾーンの規模で規格化したフレネルパラメータvから損失を求める。h=0(見通しぎりぎり)でも波面の半分が遮られて電界が1/2になるため、損失は0dBではなく約6dBになる。
- 2波モデル(大地反射)にはもでる
直接波と大地で反射した波の2波が受信点で合成されるとする伝搬モデル。反射係数はΓ=−1(完全反射・位相反転)を標準の仮定とし、行路差は近似的に2h₁h₂/dで表す。同相合成なら最大+6dB、逆相なら深く落ち込み、櫛状の干渉縞が現れる。打消し点は理論上限りなく深くなるため、本アプリのグラフは−60dBで下限をクリップして表示する。
- ハイトパターンはいとぱたーん
受信アンテナの高さを変えたときに、受信レベルが山と谷を周期的に繰り返す模様。2波モデルの干渉によるもので、山の間隔はλd/(2h₁)になる。この間隔から周波数や送信アンテナ高を逆算させる出題がある。
- ブレークポイントぶれーくぽいんと
2波モデルの距離特性で、最後の極大を越えて干渉縞が消え、単調な減衰へ変わる境目。これより遠方では受信電力が距離の4乗に反比例する急な下り坂になる。自由空間の2乗則との対比で問われることが多い。
- フレネルゾーンふれねるぞーん
送受信点を結ぶ直接経路との道のりの差で区切った、経路を包む楕円体の層。第nフレネルゾーンは経路差が(n−1)λ/2からnλ/2までの範囲で、第1フレネルゾーンだけが差λ/2以内の中心の楕円体になる。この第1ゾーンが電波の実際に通る太さにあたり、ここが十分に空いていれば自由空間並みに届き、障害物が食い込み始めると回折損失が生じる。
- フレネルパラメータふれねるぱらめーた
ナイフエッジの突出量をフレネルゾーンの太さで測り直した無次元数で、v=h√(2(d₁+d₂)/(λd₁d₂))で求める。hの符号がそのままvの符号になり、正が遮蔽、負が見通し内である。波長が短い(周波数が高い)ほどvは大きくなり、同じ地形でも損失が増える。
アンテナ・給電線
電波を出し入れする側の言葉。アンテナの寸法と利得、整合、導波管まで。
- 開口効率かいこうこうりつ
開口面アンテナの実効面積と物理的な開口面積の比で、記号はη。鏡面精度や照射分布のむらで理想どおりに絞れないぶんの割引率にあたり、パラボラの実用値は0.5〜0.7程度である。dBでは10log₁₀ηの目減りで、η=0.5なら−3dBになる。
関連アンテナ利得
- 管内波長かんないはちょう
導波管の管軸方向に測った波長で、λg=λ/√(1−(fc/f)²)。壁で反射しながらジグザグに進むため、λgは必ず自由空間波長λより長い。fが遮断周波数に近づくほど急激に伸び、周波数を上げるほどλへ漸近する。
- 給電線きゅうでんせん
送信機や受信機とアンテナを結び、高周波電力を運ぶ線路。同軸ケーブルや導波管が使われ、特性インピーダンスと整合の状態が伝送効率を左右する。反射した電力は負荷へ届かないだけでなく、送信機の終段まで戻って保護回路を働かせる。
- 指向性しこうせい
アンテナが方向によって放射(受信)の強さを変える性質。方向ごとの強さを描いた図を指向性パターンと呼び、半波長ダイポールでは断面が8の字になる。放射の総量は増やせないので、ある方向を強めれば別の方向は必ず弱くなる。
- 実効面積じっこうめんせき
受信アンテナが電力束密度から電力をすくい取る、見かけの面積[m²]。利得と波長だけで決まり、Ae=λ²G/4πである。受信電力は電力束密度×Aeで求まり、同じ利得でも波長が長いほど大きな面積になる。
- 遮断周波数しゃだんしゅうはすう
導波管が伝搬できる周波数の下限で、方形導波管のTE₁₀モードではfc=c/(2a)(aは広辺)。狭辺bは遮断周波数に関係しない。f≤fcでは伝搬せず急激に減衰するため、本アプリも管内波長を計算せず非伝搬として扱う。「弱くなるが伝わる」という選択肢は誤りである。
- スミスチャートすみすちゃーと
あらゆる複素インピーダンスを反射係数Γの円板へ写した図。中心が整合(Γ=0、S=1)、外周が全反射(|Γ|=1)で、上半分が誘導性、下半分が容量性になる。線路を電源側へ進むと点は|Γ|一定の円周を時計回りに回り、λ/2で1周、λ/4で正反対の点へ移る。
- 整合せいごう
負荷インピーダンスを線路の特性インピーダンスへ合わせ、反射をなくすこと。Z=R+jXではリアクタンスXを打ち消してから抵抗Rを合わせる二段構えの作業になる。整合が取れるとVSWRは1になり、定在波が消えて進行波だけになる。
- 絶対利得(dBi)ぜったいりとく
等方性アンテナを基準にした利得で、単位はdBi。最も強い方向で等方性アンテナの何倍の電力密度になるかを表す。アンテナは電力を増やさないので、利得とは増幅ではなく電波を絞り込む度合いに、導体損・誘電体損の分を差し引いたものである。式で書けば G = 放射効率 η × 指向性 D で、絞り込みだけを表す指向性Dと違い、利得Gには損失が含まれる。
関連アンテナ利得
- 接地アンテナ(λ/4モノポール)せっちあんてな
大地または地線の上に垂直なλ/4素子を立てたアンテナ。大地が鏡になって地中に映ったイメージが現れ、全体で半波長ダイポールと同じ電流分布になる。素子の実体は半分なので放射抵抗も約半分である。素子長は75/f[MHz]メートルで求まる。
関連アンテナの基礎
- 相対利得(dBd)そうたいりとく
半波長ダイポールを基準にした利得で、単位はdBd。基準アンテナが等方性より2.15dB強いぶん、dBi=dBd+2.15の関係で常に換算できる。アンテナ自体は同じもので、違うのは基準だけである。どちらの基準で問われているかを取り違える出題が頻出する。
関連アンテナ利得
- TE₁₀モードてぃーいーいちぜろもーど
方形導波管の基本モードで、広辺aの方向に電界の半波長がちょうど1つ収まる分布を持つ。進行方向に電界成分を持たない横電界(TE)波である。遮断周波数が最も低く、実用の導波管はこのモードだけが伝搬する帯域で使う。
- 定在波ていざいは
進む波と反射して戻る波が重なり、線路上の場所ごとに振幅が固定される現象。振幅が最大の点を腹、最小の点を節と呼び、腹と節の間隔はλ/4、同種どうしはλ/2である。腹では電圧が進行波の(1+|Γ|)倍まで上がり、大電力では絶縁破壊の原因になる。
- 導波管どうはかん
高周波を壁面の反射で導く中空の金属管で、SHF帯の給電線として使う。壁面で電界が0になる境界条件を満たす波しか通れないため、伝搬できる周波数に下限がある。方形導波管の基本モードはTE₁₀である。
- 等方性アンテナとうほうせいあんてな
全方向へ均等に放射すると仮定した、利得の基準になる仮想のアンテナ。実在しないが、絶対利得dBiやEIRPの定義の土台になっている。半波長ダイポールはこれより1.64倍(2.15dB)強い。
関連アンテナ利得
- 特性インピーダンスとくせいいんぴーだんす
給電線を進む波にとっての電圧と電流の比で、線路の構造と材質だけで決まる。同軸ケーブルでは50Ωや75Ωが標準である。負荷がこれと一致すれば反射は起きず、一致しないぶんが反射係数Γとして現れる。
- パラボラアンテナぱらぼらあんてな
焦点に置いた一次放射器からの球面波を放物面で反射し、そろった平面波にして送り出す開口面アンテナ。利得はG=η(πD/λ)²で、直径Dか周波数が2倍になれば+6dBになる。同じ皿でも周波数が高いほど波長に対して大きくなり、高利得になる。
- 反射係数はんしゃけいすう
負荷で反射して戻る波の割合で、Γ=(Z_L−Z₀)/(Z_L+Z₀)で求める。反射電力は|Γ|²なので、|Γ|=0.5でも戻るのは25%である。符号にも意味があり、Z_L>Z₀なら負荷端が定在波の腹、Z_L<Z₀なら節になる。
- 半値幅(HPBW)はんちはば
主ビームの電力が最大値の半分(−3dB)になる2方向の間の角度。パラボラではおよそ70λ/D度で、利得が+6dB上がるとビーム幅は半分になる。70は照射分布に依存する経験的な係数であり、厳密な定数ではない。
関連アンテナ利得
- 半波長ダイポールアンテナはんはちょうだいぽーるあんてな
全長がλ/2で中央から給電する、最も基本的なアンテナ。共振時は給電点で電流最大・両端で電流ゼロの定在波が立ち、入力インピーダンスは約73Ωの純抵抗になる。この「全長λ/2でちょうど73Ωの純抵抗」は無限に細い理想導体を仮定した試験用の近似で、実際の導体では端効果によりリアクタンスが0になる共振長が約0.48λ(導体が太いほど短い)まで縮む。指向性は導線と直角方向が最大の8の字で、絶対利得は2.15dBiである。
- VSWR(電圧定在波比)ぶいえすだぶりゅーあーる
給電線上の定在波の腹と節の電圧比で、S=(1+|Γ|)/(1−|Γ|)。完全整合で1、反射が大きいほど大きくなる。逆に反射係数を求めるなら|Γ|=(S−1)/(S+1)で、S=2なら|Γ|=1/3である。Sの値そのものは損失の割合ではなく、S=3でも負荷に届くのは75%である。
- 放射抵抗ほうしゃていこう
アンテナから電波として持ち去られる電力を、給電点から見た等価的な抵抗として表したもの。熱を出す普通の抵抗ではない。半波長ダイポールで約73Ω、λ/4接地アンテナではその約半分の36〜37Ωになる。
関連アンテナの基礎
- 八木・宇田アンテナやぎうだあんてな
給電する放射器の後ろに少し長い反射器、前に少し短い導波器を無給電で並べた指向性アンテナ。素子長のずれが再放射の位相をずらし、前方で強め合い後方で打ち消し合う。放射は導波器の向きへ集まり、素子長も間隔(0.1〜0.3λ)もすべて波長との比で決める。
関連アンテナの基礎
- λ/4変成器よんぶんのいちはちょうへんせいき
長さλ/4の線路を挟んで、値の異なる2つの純抵抗を整合させる手法。必要な特性インピーダンスはZ₀'=√(Z₀·Z_L)で、入力側にはZ_in=Z₀'²/Z_Lが現れる。スミスチャートの上では、λ/4は|Γ|一定の円を半周する回転にあたる。
関連スミスチャート
- リターンロス(反射損失)りたーんろす
反射の少なさをdBで表した量で、RL=−20log₁₀|Γ|と正値で定義する。値が大きいほど整合が良い。|Γ|=0.5(S=3)なら約6.0dBで、符号を逆に取らせる引っかけが多い。
受信・雑音
受信できる限界を決める言葉。雑音指数・等価雑音温度と回線設計の指標。
- 基準温度T₀きじゅんおんど
雑音指数と等価雑音温度を結ぶための約束の温度で、T₀=290K。実際の気温ではなく定義値であり、NFはこの温度の入力雑音を基準にした劣化量として決まる。Te=290(F−1)の290はこの値である。
関連受信系の雑音
- 雑音指数(NF)ざつおんしすう
増幅器や受信機が入出力のS/Nをどれだけ悪化させるかを表す量で、dBで示す。真数の雑音率Fに戻すにはF=10^(NF/10)を使う。等価雑音温度Teとは同じ情報の別表現で、Te=290(F−1)によって相互に変換できる。
関連受信系の雑音
- C/Nしーぱーえぬ
受信した搬送波電力と雑音電力の比で、dBで表す。雑音電力はkTBなので、受信電力・帯域幅・系の雑音温度が決まればC/Nが決まる。回線設計では、必要なC/Nを満たすかどうかで送信電力やアンテナ径を決める。
関連受信系の雑音
- G/Tじーぱーてぃー
受信アンテナの利得を系全体の雑音温度で割った受信系の性能指数で、G/T[dB/K]=G−10log₁₀T。Tには空から来る雑音温度と受信機の等価雑音温度の合計が入る。衛星回線の設計で、受信側の良さを1つの数値で比べるために使う。
関連受信系の雑音
- 縦続接続じゅうぞくせつぞく
増幅器や変換器を順につないだ構成のこと。総合の利得はdBの和になるが、総合の雑音指数はフリスの式に従い、単純な和にはならない。初段の利得が十分に大きければ、後段の雑音はほとんど効かなくなる。
関連受信系の雑音
- 低雑音増幅器(LNA)ていざつおんぞうふくき
雑音指数を最小になるよう設計した初段の増幅器。フリスの式のとおり初段の利得が後段の雑音を圧縮するため、アンテナ直下に置くと受信系全体の雑音指数が初段の値へ近づく。ただし初段自身の雑音だけは、どれだけ利得を上げても消せない。
関連受信系の雑音
- 等価雑音温度とうかざつおんおんど
受信機自身の雑音を、入力に付いた抵抗の温度[K]に置き換えて表したもの。基準温度T₀=290Kを介してTe=T₀(F−1)、F=1+Te/290と換算する。低雑音な受信系ほど小さく、衛星通信ではNFよりTeで扱うことが多い。
関連受信系の雑音
- 熱雑音(kTB)ねつざつおん
抵抗体の中の電子の熱運動が生む雑音で、電力はN=kTBと絶対温度・帯域幅の両方に比例する。290Kでは−174dBm/Hzで、帯域が10倍になるごとに+10dB増える。受信できる最小信号レベルを決める床になる量である。
関連受信系の雑音
- フリスの式ふりすのしき
縦続接続した増幅器の総合雑音率を求める式で、F=F₁+(F₂−1)/G₁+…となる。後段の雑音が初段の利得G₁で割られて圧縮されるため、初段の性能が系全体を支配する。必ず真数に戻して計算し、dBのまま足してはいけない。
関連受信系の雑音
- ボルツマン定数ぼるつまんていすう
熱雑音電力N=kTBに現れる定数で、k≈1.38×10⁻²³ J/K。温度と帯域幅から雑音電力を求めるときに使う。dB計算では10log₁₀k≈−228.6 dBW/K/Hzとして扱うと、回線設計の加減算に乗せやすい。
関連受信系の雑音
数学・単位
計算の道具になる言葉。デシベルと対数、複素数とフェーザ、単位の読み替え。
- 位相いそう
周期的な波の中で、いまどのタイミングにいるかを角度で表した量。同じ周波数の2波を合成するとき、位相差が0なら強め合い、180°なら打ち消し合う。2波モデルの干渉縞も定在波の腹と節も、位相差が場所によって変わることから生まれる。
- 片対数グラフかたたいすうぐらふ
片方の軸だけを対数目盛にしたグラフ。自由空間伝搬損失や電界強度を距離の対数軸に対して描くと直線になり、傾きが20dB/decadeのように読み取れる。本アプリのグラフの多くはこの形式で、直線に見えること自体が式の理解の確認になる。
- 共振きょうしん
誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが打ち消し合い、インピーダンスが純抵抗だけになる状態。直列共振の周波数はf₀=1/(2π√(LC))である。半波長ダイポールが全長λ/2で純抵抗約73Ωに見えるのも、同じ打ち消しが起きているからである。
- 常用対数じょうようたいすう
底を10とする対数で、デシベル計算の土台になる。log₁₀2≈0.301、log₁₀3≈0.477、log₁₀5≈0.699の3つを覚えておけば、試験に出る数値はほぼ暗算で処理できる。log₁₀(ab)=log₁₀a+log₁₀bにより、掛け算が足し算に変わる。
関連計算練習
- 真数しんすう
対数をとる前のもとの数のこと。フリスの式のように、dBのままでは足せず真数に戻してから計算しなければならない場面がある。dBから真数へ戻すには、電力なら10^(dB/10)、振幅なら10^(dB/20)を使う。
関連受信系の雑音
- dBmでぃーびーえむ
1mWを0dBとした電力の絶対値表現で、0dBm=1mW、30dBm=1Wである。dBWとは30dBの差があり、dBm=dBW+30の関係になる。単なる比を表すdBと違って基準が固定されているので、そのまま電力の大きさを表せる。
関連受信系の雑音
- dBµV/mでぃーびーまいくろぼるとまいためーとる
1µV/mを0dBとした電界強度の対数表現で、E[dBµV/m]=20log₁₀(E[µV/m])。1mV/mが60dBµV/m、17.32mV/mが約84.8dBµV/mにあたる。mV/mとµV/mの取り違えは1000倍=60dBのずれになるので注意する。
関連電界強度
- デシベルでしべる
2つの量の比を対数で表す単位で、電力比なら10log₁₀、電圧や電界などの振幅比なら20log₁₀を使う。20log₁₀が電力比と一致するのは、比べる2点のインピーダンスが等しい場合(電界なら波動インピーダンス120πが共通の自由空間)に限られる。掛け算が足し算になるため、利得と損失を並べる回線計算が加減算だけで済む。log₁₀2≈0.301から、電力2倍で約3dB、振幅2倍で約6dBと即答できる。
- フェーザふぇーざ
同じ周波数の正弦波を、振幅と位相だけの複素数A∠φで表したもの。回路中の正弦波はすべて同じ角速度で回るので、回転を止めた静止画だけ持ち運べばよい。時間微分がjωの掛け算に変わり、交流回路の計算が微分方程式から代数へ降りてくる。
- 複素インピーダンスふくそいんぴーだんす
交流回路で電圧フェーザと電流フェーザの比を表す複素数で、Z=R+jXと書く。実部Rが電力を消費する成分、虚部Xが位相をずらす成分である。給電線やアンテナの整合は、このRとXの両方を合わせる作業になる。
- 複素数ふくそすう
実部と虚部を組にした数で、交流の「大きさ」と「位相」を1つの数として持ち運ぶ道具になる。jを掛けることは、複素平面で90°回すことに等しい。足し算は直交形式a+jb、掛け算・割り算は極形式r∠θで扱うと計算が楽になる。
- リアクタンスりあくたんす
複素インピーダンスZ=R+jXの虚部Xで、単位はΩ。コイルは+jωL、コンデンサは−j/(ωC)を与えるため、Xが正なら誘導性、負なら容量性である。抵抗が合っていてもXが残っていれば反射は生じる。
言葉が分かったら、動かして確かめる
用語の定義は、対応する教材でスライダーを動かすと数値として現れます。まずは無料で試せる自由空間伝搬損失と見通し距離から、式と図をつなげてみてください。