一陸技|無線工学B|過去問
令和3年1月期 第1回 A-5
要点(wavelane の要約): 放射で消える電力を仮想の抵抗に置き換える定義から出発し、球面上で電力束密度を積分した放射電力と、そこから得られる抵抗の式を組合せで答えさせる問題。電流の2乗だけで割るのか、固有インピーダンスまで割り込んでしまうのかと、係数80か160かが分かれ目になる。
原文(公式問題文)
A-5 次の記述は、微小ダイポールの放射抵抗について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 (1) アンテナから電波が放射される現象は、給電点に電流 I〔A〕が流れ、アンテナからの放射によって電力 Pr〔W〕が消費されることである。これは、アンテナの代わりに負荷として抵抗 Rr を接続したことと等価である。したがって、次式が成り立つ。 Rr = [ A ]〔Ω〕 上式で表される仮想の抵抗 Rr〔Ω〕を放射抵抗と呼び、Pr〔W〕を放射電力と呼ぶ。 (2) 図に示すように、微小ダイポールから数波長以上離れた半径 r〔m〕の球面 S を考えたとき、Pr〔W〕は球面上の電力束密度の面積分として次式で求められる。ただし、微小ダイポールの長さを l〔m〕、波長を λ〔m〕、微小ダイポールの中心 O から任意の方向と微小ダイポールの軸とのなす角を θ〔rad〕とし、θ 方向における電界強度を Eθ〔V/m〕とする。 Pr = 2∫[0→π/2] (|Eθ|²/(120π))・2πr sinθ・r dθ = [ B ]〔W〕 (3) (1)及び(2)から、微小ダイポールの放射抵抗 Rr は [ C ]〔Ω〕となる。
〔図省略〕の位置 — wavelane による再現図(公式図版ではありません)。図の説明は引用の下にあります。
A B C 1 Pr/(120π|I|²) π²|I|²l²/λ² π²l²/λ² 2 Pr/(120π|I|²) 160π²|I|²l²/λ² 160π²l²/λ² 3 Pr/(120π|I|²) 80π²|I|²l²/λ² 80π²l²/λ² 4 Pr/|I|² 80π²|I|²l²/λ² 80π²l²/λ² 5 Pr/|I|² π²|I|²l²/λ² π²l²/λ²
〔図省略〕は Wavelane による編集注で、公式図版があった位置を示します。その位置には Wavelane が描いた再現図を差し込んでいます(公式図版ではありません)。図の説明は下の図カードにあります。
Wavelane が原図をもとに描いた模式図(公式図版ではありません)
出典: 令和3年1月期 第1回 第一級陸上無線技術士「無線工学B」(FB301)A-5(本試験問題)。公益財団法人日本無線協会
解かずに正答と解説を見る
正答: 4
要確認: この正答と解説は、公式解答表との機械的な照合は済んでいますが、人による照合はまだです。 公式と食い違って見えるときは、出典の解答PDFを優先し、サポートからお知らせください。
wavelane の解説(公式の解説ではありません)
放射で消える電力を仮想の抵抗へ置き換える定義から出発し、球面上で電力束密度を足し合わせた結果を経て、抵抗の値を長さと波長の比で書く。
- 空欄 A: Pr/|I|²
- 同じ電流を流したときに同じ電力を消費する抵抗へ置き換える、というのがこの量の定義なので、電力を電流の2乗で割る。真空の固有インピーダンスまで割った候補は、電界から電力束密度を出す段の係数を持ち込んだもので、単位もオームにならない。
- 空欄 B: 80π²|I|²l²/λ²
- 微小ダイポールの電界は軸から測った角の正弦に比例するので、面積分は正弦の3乗の積分になり、その値は 2/3 である。電界の係数 60π|I|l/(rλ) と球面の面積要素を通して整理すると、係数 80π² が定まる。
- 空欄 C: 80π²l²/λ²
- (2)の電力を(1)の定義へ入れると電流の2乗が約分されて消え、長さと波長の比の2乗に係数を掛けた形が残る。長さが波長の 1/10 なら約 7.9 Ω で、半波長ダイポールの 73 Ω よりずっと小さい。
この組合せになっているのは選択肢 4 である。
つまずきやすい点
- 電力を電流の2乗で割るのが定義である。固有インピーダンスで割る操作は、電界から電力束密度を出す段に属する。
- 角についての積分は正弦の3乗になり、値は 2/3 である。係数が 160 になる候補は、この積分値か半球を2倍する操作のどちらかを取り違えている。
理由から確かめる
- アンテナ方式図鑑電界強度・微小ダイポール・電力束密度・放射抵抗
- アンテナ・電波測定の基礎電界強度・微小ダイポール・電力束密度・放射抵抗
- アンテナの基礎電界強度・電力束密度・放射抵抗