一陸技|無線工学B|過去問
平成30年7月期 B-5
要点(wavelane の要約): 小さなアンテナに金属の箱をかぶせて放射を止めた状態と外した状態を比べ、放射の効率を出す方法について、測るインピーダンスの成分、箱を外したときの抵抗の中身、抵抗の比から効率を出す式、反射電力の比で表した式、電圧反射係数で表した式を語群から選ばせる問題。
原文(公式問題文)
B-5 次の記述は、図に示す Wheeler cap(ウィーラー・キャップ)法による小形アンテナの放射効率の測定について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。ただし、金属の箱及び地板の大きさ及び材質は、測定条件を満たしており、アンテナの位置は、箱の中央部に置いて測定するものとする。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。 (1) 入力インピーダンスから放射効率を求める方法 地板の上に置いた被測定アンテナに、アンテナ電流の分布を乱さないよう適当な形及び大きさの金属の箱をかぶせて隙間がないように密閉し、被測定アンテナの入力インピーダンスの[ ア ]を測定する。このときの値は、アンテナの放射抵抗が無視できるので損失抵抗 Rl〔Ω〕とみなすことができる。 次に、箱を取り除いて、同様に、入力インピーダンスの[ ア ]を測定する。このときの値は、被測定アンテナの放射抵抗を Rr〔Ω〕とすると[ イ ]〔Ω〕となる。 金属の箱をかぶせないときの入力インピーダンスの[ ア ]の測定値を Rin〔Ω〕、かぶせたときの入力インピーダンスの[ ア ]の測定値を R′in(= Rl)〔Ω〕とすると、放射効率 η は、η = [ ウ ]で求められる。 ただし、金属の箱の有無にかかわらず、アンテナ電流を一定とし、被測定アンテナは直列共振形とする。また、給電線の損失はないものとする。 (2) 電圧反射係数から放射効率を求める方法 金属の箱をかぶせないときの送信機の出力電力を Po〔W〕、被測定アンテナの入力端子からの反射電力を Pref〔W〕、(1)と同じように被測定アンテナに金属の箱をかぶせたときの送信機の出力電力を P′o〔W〕、被測定アンテナの入力端子からの反射電力を P′ref〔W〕とすると、放射効率 η は、次式で求められる。ただし、送信機と被測定アンテナ間の給電線の損失はないものとする。 η = (Po - Pref - (P′o - P′ref))/(Po - Pref) ・・・・・・① Po = P′o のとき、η は、式①より次式のようになる。 η = [ エ ]/(1 - (Pref/Po)) ・・・・・・② 金属の箱をかぶせないときの電圧反射係数を |Γ|、かぶせたときの電圧反射係数を |Γ′| とすると、η は、式②より、η = [ オ ]となり電圧反射係数から求められる。ただし、|Γ′| ≧ |Γ| が成り立つ範囲で求められる。
〔図省略〕の位置 — wavelane による再現図(公式図版ではありません)。図の説明は引用の下にあります。
1 虚数部 2 Rr - Rl 3 1 - (R′in/Rin) 4 (P′ref/P′o) - (Pref/Po) 5 (|Γ′|² - |Γ|²)/(1 - |Γ|²) 6 実数部 7 Rr + Rl 8 1 - (Rin/R′in) 9 (Pref/Po) - (P′ref/P′o) 10 (|Γ′| - |Γ|)/(1 - |Γ|)
〔図省略〕は Wavelane による編集注で、公式図版があった位置を示します。その位置には Wavelane が描いた再現図を差し込んでいます(公式図版ではありません)。図の説明は下の図カードにあります。
Wavelane が原図をもとに描いた模式図(公式図版ではありません)
出典: 平成30年7月期 第一級陸上無線技術士「無線工学B」(FB007)B-5(本試験問題)。公益財団法人日本無線協会
解かずに正答と解説を見る
正答: ア 6/イ 7/ウ 3/エ 4/オ 5
要確認: この正答と解説は、公式解答表との機械的な照合は済んでいますが、人による照合はまだです。 公式と食い違って見えるときは、出典の解答PDFを優先し、サポートからお知らせください。
wavelane の解説(公式の解説ではありません)
金属の箱でアンテナを覆うと放射が止まり、入力抵抗は損失抵抗だけになる。箱を外したときの入力抵抗(放射抵抗+損失抵抗)と比べれば放射効率が出る。同じことを反射電力や電圧反射係数でも書ける。
- ア: 解答 6(実数部)
- 放射も損失も電力を消費する抵抗分として入力インピーダンスの実数部に現れる。直列共振形のアンテナを共振させて測るので、比べるのは実数部である。
- イ: 解答 7(Rr + Rl)
- 箱を外すと電波が出ていくので、損失抵抗に放射抵抗が直列に加わる。入力抵抗は2つの和になる。
- ウ: 解答 3(1 - (R′in/Rin))
- 放射効率は Rr/(Rr + Rl) で、Rin = Rr + Rl、R′in = Rl を入れると (Rin − R′in)/Rin = 1 − R′in/Rin になる。分母と分子を逆にした語群8は1を超える値を出してしまう。
- エ: 解答 4((P′ref/P′o) - (Pref/Po))
- 式①で Po = P′o とおくと、分子は P′ref − Pref になる。分子と分母を Po で割ると、分子は (P′ref/P′o) − (Pref/Po)、分母は 1 − (Pref/Po) になる。
- オ: 解答 5((|Γ′|² - |Γ|²)/(1 - |Γ|²))
- 反射電力と送信電力の比は電圧反射係数の2乗に等しいので、Pref/Po = |Γ|²、P′ref/P′o = |Γ′|² を式②へ入れる。2乗を落とした語群10は電圧と電力を混同している。
ア〜オの解答は 6・7・3・4・5 である。
つまずきやすい点
- 箱をかぶせたときの方が反射が大きくなる(放射で逃げていた分まで返ってくる)。エで引く順を逆にすると効率が負になるので、|Γ′| ≧ |Γ| の条件と向きをそろえて確かめる。
- Wheeler cap 法は、箱が放射だけを止めてアンテナの電流分布や損失を変えないことが前提である。箱が小さすぎて近傍界を乱すと、損失抵抗まで変わってしまう。
理由から確かめる
- アンテナ・電波測定の基礎入力インピーダンス・放射効率・放射抵抗・反射係数
- アンテナの基礎入力インピーダンス・放射抵抗
- アンテナ方式図鑑入力インピーダンス・放射抵抗