一陸技|無線工学B|過去問
令和6年7月期 B-1
要点(wavelane の要約): 誘電体が二次波源になる仕組みの呼び名から始めて、距離の2乗と電力束密度の比で書く定義式、その式が想定している仮想的な散乱体の指向性、そして半径が十分大きい金属球の値までを語群から選ばせる問題。
原文(公式問題文)
B-1 次の記述は、散乱断面積について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。 (1) 均質な媒質中に置かれた媒質定数の異なる物体に平面波が入射すると、その物体が導体の場合には導電電流が生じ、また、誘電体の場合には [ ア ] が生じ、これらが二次的な波源になり、電磁波が再放射される。 (2) 図に示すように、自由空間中の物体へ入射する平面波の電力束密度が pi〔W/m2〕で、物体から距離 d〔m〕の受信点 R における散乱波の電力束密度が ps〔W/m2〕であったとき、物体の散乱断面積 σ は、次式で定義される。 σ = lim(d→∞){4πd²([ イ ])}〔m2〕 上式は、受信点における散乱電力が、入射平面波の到来方向に垂直な断面積 σ 内に含まれる入射電力を [ ウ ] で散乱する仮想的な等方性散乱体の散乱電力に等しいことを意味している。 (3) 散乱方向が入射波の方向と一致するときの σ をレーダー断面積又は [ エ ] 散乱断面積という。金属球のレーダー断面積 σ は、球の半径 r〔m〕が波長に比べて十分大きい場合、[ オ ]〔m2〕にほぼ等しい。
〔図省略〕の位置 — wavelane による再現図(公式図版ではありません)。図の説明は引用の下にあります。
1 磁化 2 pi/ps 3 全方向に無指向性 4 後方 5 πr² 6 分極 7 ps/pi 8 受信点方向に対して単一指向性 9 前方 10 4πr²
〔図省略〕は Wavelane による編集注で、公式図版があった位置を示します。その位置には Wavelane が描いた再現図を差し込んでいます(公式図版ではありません)。図の説明は下の図カードにあります。
Wavelane が原図をもとに描いた模式図(公式図版ではありません)
出典: 令和6年7月期 第一級陸上無線技術士「無線工学B」(FB607)B-1(本試験問題)。公益財団法人日本無線協会
解かずに正答と解説を見る
正答: ア 6/イ 7/ウ 3/エ 4/オ 5
要確認: この正答と解説は、公式解答表との機械的な照合は済んでいますが、人による照合はまだです。 公式と食い違って見えるときは、出典の解答PDFを優先し、サポートからお知らせください。
wavelane の解説(公式の解説ではありません)
散乱断面積の定義を順に組み立てる。物体が受けた電力を全方向へ均等にまき散らす仮想の散乱体へ置き換える、という定義の骨格を押さえるのが要点。
- ア: 解答 6(分極)
- 誘電体には自由に動ける電子が無いので導電電流は流れない。代わりに束縛された電荷がわずかにずれて向きをそろえ、それが入射波に合わせて振動して二次的な波源になる。導体側の導電電流と対になる語である。
- イ: 解答 7(ps/pi)
- 散乱側の電力束密度を入射側で割った比に 4πd² を掛けると面積の次元になる。比を逆に取ると、距離が離れるほど値が大きくなってしまい、物体に固有の量にならない。
- ウ: 解答 3(全方向に無指向性)
- 掛ける 4πd² は半径 d の球の表面積である。受け取った電力を球面全体へ均等にまき散らすと置いたからこそ、この面積で割り戻す形になる。方向によって強さが違う散乱体を仮定すると、定義が観測方向に依存してしまう。
- エ: 解答 4(後方)
- 送信と受信が同じ場所にあるレーダーが使うのは、入射してきた方向へ返ってくる散乱である。だからレーダー断面積は後方散乱断面積とも呼ぶ。前方散乱は物体の向こう側へ抜ける向きで、別の量である。
- オ: 解答 5(πr²)
- 半径が波長に比べて十分大きい金属球は、光の鏡面反射と同じ扱いができる。返ってくるのは球が作る影の面積、すなわち断面積 πr² ぶんで、表面積の 4πr² ではない。
ア〜オの解答は 6・7・3・4・5 である。
つまずきやすい点
- 4πd² を掛ける相手は、散乱側を分子に置いた比である。逆にすると距離が消えず、面積の次元にもならない。
- 十分大きい金属球の値は球の断面積である。表面積と取り違えると 4 倍になる。半径が波長より十分小さいレイリー領域では、波長の4乗に反比例するまったく別の式になる。